木偶の棒 展示会
木偶の棒をつくる展示会の案内文が届きました。ご高覧いただければ幸いです。
日時：1月20日〜2月1日
場所：霞ヶ浦環境科学センター
「霞ケ浦の木偶の棒・冬」
「この木の中に宿る神さまを彫りだしてください。」
２００８年冬、１１月２９、３０日。とある農作業小屋に集まっていただいた参加者の皆さんへの最初の投げかけは実に単純でした。この木、といっても特別な木ではありません。霞ケ浦にほど近い、ドングリ山やその周辺で、霞ヶ浦市民協会の方々によって払われた普通の枝です。
しかし、これが思うようにならない。たいていの人は小刀を持つことすら初めてです。慣れない道具で樹皮を剥くだけでも手に豆ができてしまいます。普通の枝、と侮っていた自分をすぐに後悔することになります。「普通」が手ごわい。
今回使った枝は、松、ケヤキ、梅、もちの木、そして檜などですが、何の加工もされていません。幹から払って、１メートルほどに分断されただけのものです。いわば、小さな自然がぎゅっと凝縮されたそのままのものです。
自然は本来人の思うままにはならないものなのだと思います。しかし、折り合いをつけることはできるはずです。例えば、町に住んでいると、青々とした田んぼやその間を流れる清い水や、その水を集める豊かな里山の風景を見て、ホッとしたりするものですが、そんな美しい里山の風景というのは、長い時間、そうした折り合いとせめぎ合いを繰り返した結果、できあがってきたものなのです。
参加者の方々の格闘は続きます。
硬い節は掘り進めないのでそのままに、ときには細い枝のシルエットの美しさは注意深く生かして。こうしたい、と強く思う事と、できることとできないこと。そのはざまに立ちあいながら、夢中で目の前の‘小さな自然’と交渉する。それが、木偶の棒を作る、という驚くほど単純な遊びの本質だと僕は考えます。
丸一日、二日。なかにはさらに数日。交渉が行われた結果。普通の枝から彫りだされ現れた姿は、作者と小さな自然の間に生まれた一つの風景だと僕は思うのです。そして、ここに並べられた木偶達はご覧のように、皆生き生きと輝いて、どれもが実に味わい深い。
一木一草にまで宿るとされる八百万の神様ですが、それ自体には形はありません。
我が国における神様は常に何かの姿を借りてたまたま現れる、という気まぐれなものです。
しかし、自然と人の密な関係の中にこそ、（恐れや感謝という感情をバックボーンに）私たちは時折それを見出し得たのではないでしょうか？
そういう意味で、ここに並ぶ木偶の棒たちは、里山の樹の枝を借りて現れた、霞ケ浦のほとりの素朴な神々の姿なのではないかと僕は思うのです。
前川秀樹
（注）木偶の棒作品展は茨城県元気な森林づくり活動支援事業の補助を受けて実施しているものです。
社団法人 霞ヶ浦市民協会
